亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………良い………追跡など無用だ。……………する必要など無い…………」
ククク…と小さな笑い声が室内に響いた。
「……………あちらと接触されれば………こちらの情報が…」
「……………今更…………どんな情報が漏れても何も問題は無い…………………隠し通してきた秘密自体が、手元から離れたのだ………」
「………」
クライブは部屋の奥の暗がりに視線を移した。
………その先には、フェンネル王53世の……動かぬ肖像画。
光りの無い大きな瞳。何も語らない、美しい女王カルレット。
―――………さて………神々しく勇ましい王女の…哀れな姫君は…………どんな行動を起こすのか。
「…………楽しみだな………?………………カルレットよ」
「嘘だ」
隊長クラスの者しか出入りが許されない軍議室で、イブは呟いた。
無表情で正面に立つベルトークと、ただ無言で椅子に座っているジスカ。
何故か呼び出され、扉の前で整列していた第4部隊隊員の面々は、ベルトークの口からトウェインの脱走の事を聞かされた。
………隊員三人は硬直した。