亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
言われるまで始終首を傾げていたイブは、困惑の表情を浮かべて首を左右に振る。
後ろにいるマリアは、ただ目を丸くするばかり。
隣りに佇むダリルは、ピクリとも動かず、無言だった。
「…………嘘。嘘だ。………何言ってんの…」
相手が上司であることなど忘れ、イブは食ってかかった。
「………隊長は…隊長はそんな事しないもん………しないもん!………脱走?………嘘に決まってる!そうやってお偉いさん達の中で丸め込んで……隊長を追っ払ったんじゃないの!?」
「………本当の事だ。嘘ではない。………トウェインは自分の意志で裏切ったのだ。………………我等が奴を追い払う理由など無いだろう……」
「……………何よそれ………あたしは……信じないから!!あたしは………隊長と敵になんかなったりしないから!!………違うよね?……違うでしょジスカ?……」
小刻みに震えながら、イブは不安と悲しみに溢れた大きな瞳を向けた。
……その視線を受け止めたが……ジスカは、すぐに逸らした。
「………………本当……だ……」
………イブはギュッと両手を握り締めた。
茶色の瞳が、赤くなったり戻ったりを何度も繰り返す。