亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「…………………何よ…何よ…二人して………………………むしずが走る………!」
捨て台詞の様に上司の前で暴言を吐き捨て、イブは踵を返し、走って部屋から出て行った。
ダリルも後に続いて歩いて出て行った。
「………お前ら……!」
ジスカは立上がり、二人を追いかけた。
慌ただしく開け放たれた扉は、鈍い音を立ててゆっくりと口を閉じた。
「……………」
残ったマリアは、佇むベルトークに向き直った。
真っ直ぐ見据えるマリアに、ベルトークは冷たい視線を重ねた。
「…………脱走だなんて………そんなこと…………………………………………何があったんですか……?」
トウェインが裏切るなど………有り得ない。もしそれが本当だとしても……………そうしなければならなかった何らかの理由があったからに違いない。
「―――お前が気にする事ではない」
「………そう……………ですか………でも……」
………一体何が…。
マリアは悲しげな表情を浮かべて俯いた。
「………………関係の無い話だ。……………………それよりもお前は………………………自分の心配をしろ………」