亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
マリアはビクリとうろたえた。
しかし、相変わらずの柔らかい笑みを浮かべ、少し困った様に首を傾げた。


「………心配を…ですか……別に何処も悪くなんて…」

「………浸食の現状なら……軍議でとっくに聞いている…………しらばっくれても無駄だ……」

ベルトークはマリアに歩み寄り、彼女の白い頬に片手を添えた。


こちらを遠慮がちに見上げるマリア。

………肌の色がやけに白い。…いや、青白い。透き通ってしまうのではないかと思うくらいだ。
………以前よりも痩せた気がする。


………生命力をどんどん吸われているのだ。



マリアはベルトークの視線を避ける様に俯いた。

「………トウェイン隊長ったら……お喋りですね………………誰にも秘密って言ったのに………」

悲しげに微笑むマリアを、ベルトークは無言で、そっと抱き寄せた。
ベルトークの胸に顔を埋め、マリアはやはり微笑を浮かべたまま、小さな声で呟いた。


「……………いくら心配しても………もう…仕方無いから……」

……マリアを包むベルトークの腕に、力が籠った。



「…………………マリア………」


「………………はい」

………泣きそうな声で、マリアは答えた。
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