亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
アレクセイがごく普通に持っていたのは……婦人服。
派手過ぎず、地味過ぎない上品なもの。
やや埃を被っている古いものだ。
それを…………何故アレクセイは持っている?
第一、女物の服などいらない。国家騎士団には女性はいないのだ。
「……………その服はいったい………」
「貴族の城から発掘致しました。あそこは昔のまま、家具に関してはほとんど手付かずでしたからな。衣服やドレスの一枚くらいあるのではないかと探してみると……………いやまぁ………あるものですなぁ」
「そんなことは聞いていない。………婦人服があった場所を聞いている訳じゃないぞ?俺はその服の用途を聞いて…………」
「お帰り大将~」
階上から間の抜けた声が響いた。ふと脇の螺旋階段の真上を見上げると、何処にいたのか、オーウェンがひらひらと手を振っている。
………満面の笑みで。
「軍議を開くんだろ?話は聞いてる。リストも俺も準備万端だ。後はお前だけだぜ」
………こんなに早く軍議を始められるとは珍しい。
いつもならオーウェンの捜索に手間取るのだが……。
どういう風の吹き回しだろうか。
有り得ない程、奴は軍議に意気込んでいる。見よ、あの朗らかな顔を。