亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………アレクセイ…何かあったのか…?………………アレク………」

振り返ると、そこにはもうあのにこやかな老紳士の姿は無かった。気配さえ感じ取れなかった。


………誉れ高き、元国家騎士団総団長であった頃の鍛え抜かれた身体能力は、老後の生活にもしっかり行き届いている。

無駄に。



螺旋階段を昇り、いつも軍議を開く部屋に向かった。

オーウェンが横に並んで、共に向かった。

「首都はどんなだったか?」

「相変わらずだ。……治安は良くないな。裏での魔獣の売買は減ったものの………最近では国外にまで手を出している様だ。………今朝なんかは、密猟でデイファレトから……メルベリンとかいうでかい鳥を回収した。…あんなの……生まれて初めて見た」

王政が崩壊しているデイファレトは、密猟やら闇売買の巣窟と言っても過言では無い。

バリアンの商人が自由に行き来し、何かしら持ち帰って来るのだ。
そのほとんどは、あちらの魔獣や野獣。
絶滅したものも少なくない。


「……バリアンは相変わらず悪が多いな。比べてデイファレトの連中は………寡黙だな」

と言うより、デイファレトの住人は滅多に見れない。

亡国と化してから、普段何処にいるのか。謎の多い国だ。
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