亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――ガチャン、と正面で部屋の扉が開く音がした。

開いた隙間から、ちょっとお疲れ気味のアレクセイがすっと入って来た。


「……いやはや………一応オーウェン様の命じられた通り、着替えの衣服を持って行きましたが………『スカートなんぞ着らん!そんなひらひらした物見せるな!絶っ対に着ないからな!!』と断固拒否されまして………。………仕方無く、男物を着て頂きました。……キーツ様の輝かしい御誕生から早18年。このアレクセイ……御容姿から頭の方まで、センスというセンスを駆使し、手塩をかけてお育てしてきましたが………………まだ、甘かったのですね……御婦人一人の趣向も理解出来ぬとは………面目御座いません。齢70間近の老いぼれですが、また一から学び直す事に致します。…そうそう、御食事の事をお尋ねしましたが、要らないとの事でした。せめて飲み物をと思い、レモンティーをお渡ししましたところ、それはそれはもう喜んで頂きまして。外見もそうですが、レモン好きであるところも本にローアン様とそっくりでして…………………………………どうか致しましたか?」





アレクセイは首を傾げた。












「…………まだ…話されていなかったのですか?」

「おお。まだだった」















キーツは固まっていた。
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