亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………。
妙な静けさが漂った。
………思考停止したキーツ。オーウェンは相変わらず笑顔で、ついさっきまで喚いていたリストも、空気を読んだのか今はなんだかおとなしくなっている。
アレクセイは笑顔で、無駄になった婦人服と空のカップが乗った盆をテーブルに置いた。
「…………………何か……紅茶を持って参りましょうか」
「おお~頼むぜ。俺アップルティーな。リストはどうする?」
「…………同じで良い。………あ…ミルクと砂糖入りで…」
「はい、かしこまりました。……………キーツ様はどういたし…」
アレクセイが視線を向けると、そこには、すらりと鞘から剣を抜くキーツが。
青白い光沢を放つ剣は真っ直ぐ平行に静止し、一直線にオーウェンへ伸びた。
「―――おおおおおっ!?」
コンマ1秒で剣を抜き、鋭い無言のキーツの突きを受け流した。
すぐさま状態を立て直し、キーツは剣を頭上に大きく振りかぶり………容赦無く振り下ろした。
対応に遅れたオーウェンは、瞬時に白刃取りで防いだ。
………よく切れる刃先が目と鼻の先で止まっている。
それを挟んだ向こう側には、妙に怖いキーツの顔があった。