亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………そうですな。御本人は本人なりに忘れようと必死なのですが………まさか向こうからお出でになるとは………踏んだり蹴ったりですな」
「………どうするよ。あいつあの様子じゃあ面会どころか話すことも出来ねぇぜ?……………地下のお嬢さんは何て言ってる?」
「……………面会を申し入れております。まぁ別に……キーツ様でなくともよろしいかと………」
出来れば話がしたい、とのことだった。
ルアはずっと彼女の側から離れないでいるらしい。
「………面会…ね。何を話したいやら………何か企んでいそうで………どうもすんなりと受け入れられないね」
「…………ええ。………………ですが……」
アレクセイは溜め息を吐いた。何か思い悩む様な、怪訝な表情を浮かべていた。
「……何だ?何か気にかかる事でもあるのか?」
「………」
真っ暗な地下牢はひんやりと冷たい。
最低限必要な物しか無い狭いこの中に、彼女は無言で自分から入って行った。
ルアは格子の外でおとなしくしていた。
『………では、私はこれで。……何かあれば兵士に申付け下さい』
『………すまないな。………………ルア、お前もここにいる必要は無いんだぞ』