亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『………………随分と懐かれておりますな』

『…………そう……だな』






『……………………………貴女は………何故』

『…………何だ…アレクセイ…?』

『…………………いえ。………そういえば…私は貴女に名乗りましたかな……?』







『……………アレクセイは………アレクセイだろ』















アレクセイは意味深な笑みを浮かべた。

「……………どうも………………ただ似ている…というだけではないように思われますな…」


「………?」










深い穴の底。
冷たい煉瓦造りの牢屋。唯一外が見えるのは、頭上の豆粒程の穴だけ。深い地下でも、淡い月明りは届く。



………こんなに明るい夜は何年ぶりだろうか。


沈黙の森の奥にある黒の塔は、月明りも届かない。日の光さえまともに差し込まない。


見えるのは全て闇。側にいるのは冷たい闇。私の居場所は、光が拒む場所。





懐かしい光。暖かな、頬を撫でる明かり。


………トウェインは部屋の一番隅に寄り、身体を縮こませ、そっと目を閉じた。

格子の外にいるルアは一向に戻る気配が無い。

ここで一晩明かす気なのだろうか。










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