亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
15.殺してよ


羽の様に軽かった剣。扱い慣れた長剣。
我が腕の如く動き、空を斬り、風を震わせる。


………しかし………その感覚も永遠ではない。


ここ数年で、身体は徐々に衰えていた。

走る速さも、跳躍力も、耐久力も………昔に比べるとがた落ちしていた。

………老いには勝てない。
これ以上この国家騎士団の頂上に立つのは……もう無理だろう。

幹部達は至極残念そうだったが…了承してくれた。





問題は………次期総団長の人選だった。


戦闘能力は勿論のこと、頭脳明晰、数百人もの兵士を統制することが出来る資質、国への厚き忠誠心…が問われる。


何人か候補はいたが………どれもなんだか引っ掛からない。


………後継者選びに頭を悩ませていたそんな時、一人の若い男が入団してきた。


………入団当初から、目立たないのに何故か存在感がある彼は、全ての能力に於いて群を抜いていた。



………何を考えているのか分からない虚ろな目。

瞬間、彼だ………と思った。

………何処か……危険な臭いを漂わせていたが……私は、彼しかいないと思った。



まだ若い男だ。










名は確か………。




クライブ=フロイア。
< 664 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop