亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
15.殺してよ
羽の様に軽かった剣。扱い慣れた長剣。
我が腕の如く動き、空を斬り、風を震わせる。
………しかし………その感覚も永遠ではない。
ここ数年で、身体は徐々に衰えていた。
走る速さも、跳躍力も、耐久力も………昔に比べるとがた落ちしていた。
………老いには勝てない。
これ以上この国家騎士団の頂上に立つのは……もう無理だろう。
幹部達は至極残念そうだったが…了承してくれた。
問題は………次期総団長の人選だった。
戦闘能力は勿論のこと、頭脳明晰、数百人もの兵士を統制することが出来る資質、国への厚き忠誠心…が問われる。
何人か候補はいたが………どれもなんだか引っ掛からない。
………後継者選びに頭を悩ませていたそんな時、一人の若い男が入団してきた。
………入団当初から、目立たないのに何故か存在感がある彼は、全ての能力に於いて群を抜いていた。
………何を考えているのか分からない虚ろな目。
瞬間、彼だ………と思った。
………何処か……危険な臭いを漂わせていたが……私は、彼しかいないと思った。
まだ若い男だ。
名は確か………。
クライブ=フロイア。