亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――。


しばしの沈黙。


薄暗い中、ベルトークは再度クライブに向き直った。


「……………小僧、とは………ダリル=メイですか」

「…………………あの小僧も………何も行動を起こさぬか…………………………………意外だな………奴ならやり兼ねんのだが………」


「…………………一応、危険な重要人物として監視しております。………奴には前科があります故……」


クライブは垂れる前髪を払い、にやりと口を緩めた。

「……………よく見ておけ。……………………奴は元は………小汚ない民衆共の……下らない反逆軍の前線に置かれた……人殺しの武器だ………………………こちら側でも、国家騎士団側でもない人間…………それ故、トウェインがいない今…………反逆の意思など簡単に持てる筈だ……………」




クーデターから続くこの戦争。

日々対立し、血が流れる戦場に立っていたのは、なにも国家騎士団とアレスの使者だけではない。




明け暮れる戦争を、国民はただ黙って見ている訳ではなかった。


二つの勢力のどちらにも属さない、民の中から生まれた軍事組織。


それは容赦無く、国家騎士団であろうと、アレスの使者であろうと攻撃してきた。
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