亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
それらはほんの数年前にアレスの使者によって全滅したが………。
………当時9歳だったダリル=メイという、小さな少年だけが生き残った。
何処にでもある貧困階級の農村部で生まれたこの少年。
兵士と並ぶ戦闘能力など皆無である少年に、過去、どれ程てこずったことか。
「……………主力である人間が少ない今…………これ以上の裏切りはきつい。…………………………他の兵士にはトウェインの脱走の事は漏らすな」
「―――…寒い」
もうすぐ冬だ。
朝のひんやりとした空気が、だんだんと肌を刺す様な冷気を帯びてきた。マリアの部屋の一角で、イブは身体を縮めてごろごろと寝転がっていた。
朝の訓練が予定されていたが、その中に第4部隊は入っていなかった。
はっきり言って…暇だった。
「………大丈夫?毛布持って来ようか?」
「………ん―………やっぱり…いい。………体温上げるから…」
「………フェーラって便利だね………」
椅子に腰掛け、ダリルは静かに本を読んでいる。
「………でも…寒いのは苦手なの―………火山地帯で生まれたんだよ―?冬は冬眠するのが本来の習性―………」