亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
訳の分からぬまま、トウェインはそれ以上何も言わなかった。

「………改めて言うが…今度の襲撃戦は宣戦布告をした上でのものだ。敵のリーダーやその幹部が前線に出て来る可能性は大いにある。……第4部隊にとっては初陣だ。敵の支柱である人物を把握して頂こう」

そう言ってベルトークは、何やら分厚い古びた本を地図の上に広げた。
金の刺繍で見たこともない文字が至る所に刻まれている。
……古代の文字だろうか。

トウェインは首を傾げる。

「………そういや…トウェインはこれ見るの初めてなんだよな―………凄いんだぜこの本。なんでも、滅んだ魔の者達の私物だってよ…」

面白そうに、ぼそぼそと囁いてくるジスカ。
………魔の者の?……これが……?

何処からどうみても………本。

ベルトークがページをぱらりと捲るが、どの紙上も白紙だ。



…ただ事の成り行きを見守るしかない。
腕を組み、怪訝な表情で傍観した。


ベルトークは本の真ん中に手を添え、静かに呟き始めた。



「―――我は偉大なる創造神アレスに忠誠を誓う者………慈悲なる神よ…その御手で我らを誘い給え。………我が名はベルトーク=リンクス………誠なる浮き世の名である」
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