亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………さながら神父の様な、堅苦しい台詞だ。






―――瞬間、本のページが独りでに、勢い良く捲れ始めた。

ぱらぱらぱらぱら………






純白に光出す本。


―――何も無かった筈の白紙から、煙の様なものが立ち込めた。



―――否。煙ではない。………小さな文字の塊だ。
まるで生きているかの様に、螺旋状に回転しながら、天井をゆっくりと漂う。




その光景に、トウェインは唖然とした。





小さな文字の群れが………蝙蝠の様に頭上を回っている………。


「……アカシック年代記…は、知らないか…?」

舞い上がる文字を見上げたまま、ベルトークはトウェインに言った。

「………アカシック年代記?」

………聞いたことがある言葉だ。しかし、詳細は知らない。

「アカシック年代記………この世の世界、知識、人物、感情までもが記録されたものだ。………過去から未来まで…無限の記録………創造神アレスの産物だ。…魔の者達はこれを使って予言や占いごとをする」

………こんな古びた本が………。
改めて、まじまじと神の産物を凝視する。

「………ただ、アカシック年代記は何百もの書物からなる。これはその一つにすぎない。………主に、過去。しかも、人物の記録しかない。」

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