亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
大昔は、知識や思想が記録された書物もあった様だが、その殆どが紛失しているらしい。

世界の均衡を保つため、王に政の助言をしながら放浪する魔の者達。
そんな彼らが持ち歩いていたため、アカシック年代記は他の大国に散らばっている可能性が高い。


真上のぶら下がったシャンデリアを中心に舞い続ける、古代文字の群集。
神秘的と言えば神秘的だが………なんだかその蠢く様は、影と酷似していて、悍ましいものに思えた。

「………城を守りし者、国家騎士団の柱は誰ぞ………その人物を示せ…」

ゆらゆらと漂う文字の群から、小さな塊がゆっくりと降りて来た。

トウェイン達の中心で静止したそれは、徐々に人の形に変わっていった。

……20から30センチ位の小さな黒い人形。
顔の細かな部分や体つき、服装が、忠実に具現化されていく。

トウェインはただ目を丸くするばかりだ。


「……説明を始める。特に、敵の顔を知らないトウェインは、この機によく頭に入れておく事だ。…………まず、国家騎士団の主要幹部二名。…団員の中ではNo.2の者からだ」


ぼんやりと浮かぶ小さな人型が、見たこともない男の姿となった。
< 70 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop