亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――現れたのは、長身でガタイの良い若い男だった。
ハニーブラウンの長い三つ編みを後に一本垂らしている。切れ長のオレンジの瞳は挑む様な目付きだ。

………だが…なんだかその顔はほくそ笑んでいる…気がする…。

「………名は…〈オーウェン=ヴァンニ〉………元侯爵家の嫡男だ」

「………侯爵………貴族ですか…」

貴族の殆どは、最初のクーデターの際に王族もろとも殺された。

生き残った一部の貴族の多くは、国家騎士団に属している。

………こちらに恨みを抱く者達の集まりと言える。

「……侯爵…ヴァンニ家の唯一の生き残りらしい」

ふん、とゴーガンが鼻で笑った。

「………殺し損ねた野郎が、主要幹部ってのは気に食わねぇ………死に損ないめ」

………クーデターを勃発させたのは…総隊長、ベルトーク、ゴーガンの三人であったと聞く。
………一体、何人貴族を殺したのだろうか………よほど恨まれているに違いない。

「………お前が殺し損ねたのだろう、ゴーガン。………話を戻す。……この男は殆どの兵の指揮をとっている。よく統率も取れており、兵の動かし方も、その辺の軍師とは比にならないほど上手い…」

「……好戦的なのかよく分かんねぇんだけどよ…戦場では絶対いるぜ、こいつ。普通に話しかけてくる変な奴だよ…」

顔をしかめながらジスカは小さく囁いた。
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