亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

………何も?

何も食べて………。


「………ちょい待ち。…………………奴を捕らえてからもう……七…八日は経っているよな?…………何も?」

信じられない…とオーウェンは唖然とする。

「………はぁ。…………水はお飲みになるのですが………それ以外は何も………。…………お腹が空かないとだけ言われて………」

「………嘘だろ………様子は?」

「………それが………いたって普通で……何もお変わりありません。………衰弱している様にも見えません…………今朝もルアに話し掛けておいでで…」

…………一週間以上も水だけで………しかしいたって健康で……………………何者?


「………お体の事が心配で心配で………私……どうすれば良いのか……」

…敵兵ってこと忘れてない?…と、舌の上まで出かけた言葉を飲み込み、オーウェンは無言で椅子に腰を下ろした。


妙な女だ。意地を張っている………訳では無いか。奴は見た目より随分と大人だ。ガキみたいな事はしない。






………そう言えば……。









………捕らえてから、まだ一度も顔を合わせていない。

今奴がどんな様子で、何を考えているのか。







………そろそろ……行動に移しますか。
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