亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………緊張しているのがよく分かる。

膝の上で握り締めた手の平が汗ばむ。

………緊張?

………俺が……何故?

相手は捕虜。敵。先日刃を交えた兵士だ。




…………会うのが怖い。

………何故だろうか。












しん…と静まり返った、中央の椅子以外何も無いだだっ広い部屋。


―――ガチャン。





部屋の扉が、ゆっくりと口を開けた。


前に座るオーウェンとリストの更に向こうに、人影がちらついた。




鉛を引き摺る鎖の音と共に、一回り小さく。華奢なシルエットが進み出て来た。


そう。これはもう、無意識なんだ。
反射的に俺の目は、頭は………………他人と彼女を重ねてしまう様になってしまったのだ。

馬鹿馬鹿しいにも程がある。

自分に呆れてしまっている。



………だから……お願いだ。








……………その姿を、俺に見せないでくれ。






俺は、他人が思っている程………強くないんだ。

弱いんだ。



















「………今から問うことに、正直に答えろ。……適当な事言ってみろ。分かり次第、捕虜から格下げだ」

オーウェンの低い声が響き渡る。

…腰掛けた捕虜は鼻で笑った。
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