亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………ま―ず―は…………そちらさんの内部情報……幹部の人間の事からいこうか…」

椅子の肘掛けに頬杖をつき、オーウェンはやや面倒臭そうに言った。

同時に、背後のキーツを盗み見る。


………平静を装っているが、明らかに動揺している。なんだか辛そうな表情で捕虜をガン見しているではないか。

(………いい加減慣れろ………馬鹿が)

小さく溜め息を吐き、オーウェンは前に視線を戻した。

「………数週間前、そちらさんの幹部…第2部隊隊長、ゴーガン=カルジスの単独による奇襲があったのは………ご存じかな?だよな?」

「………無論。……彼の行いは感情に流された突発的なものとして、我々の中では騎士道に背く汚点とみなしている」

………汚点って…。

「………幹部だったのに………奴の死に敬意も何も無いのか?」

この問いに、非情にも彼女は不敵な笑みを浮かべた。

「………敬意?………もはや彼は戦士では無かった。墓石に名など刻めない、愚劣な敗者だ」


こう淡々と答えられると、何だか彼が哀れに思えてきた。

騎士道に背く者は、完全なる異端者と見なされ、死んでも尚、周囲からの白い目を浴び続けるのだろう。

国家騎士団もその点においては厳しいが…ここまで無い。
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