亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「……ま、その異端者はいいとしてだ。………幹部の編成はあったのか?埋め合わせは」
「………昔はあったが、今現在は行われていない。第1、第3、そして第4部隊隊長の私で変わらぬままだった。………私が抜けた後は知らないがな。どこぞの誰かが居座っているやもしれん」
「………変わらずねぇ…第1が人見知りの激しいお兄さんの…ベルトーク=リンクス。第3が調子の良い小僧のジスカ=バルバトス……………で、あんたは…」
ちらりとオーウェンは顔を上げた。
オーウェンの探る様な視線が、ひしひしと伝わってくる。
「………トウェイン=フロイアだ」
…………名乗る際、トウェインは一瞬ためらった。
欠けていた記憶が少しずつ戻り始めてから、『トウェイン』という自己の意識が薄れてきている気がする。
…………自分は今確実に、『トウェイン』から元の自分へ戻ろうとしているのだ。
……………今ここで真実を明かそうとは思わない。
……話が出来過ぎていて、誰も信じないに決まっている。
……………いや………単に………。
………………怖いだけなのかもしれない。
敵となり、たくさんの命を奪ったというのに…………今更正体を明かせるだろうか。