亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………つい数秒前まで…確か尋問をしていなかっただろうか。


「…………ここは騒がしいな…」

「………これが日常風景で御座います…………悲しいですが」

トウェインの後ろに立っているアレクセイは、ハンカチで涙を拭いながら言った。

この老紳士の今までの苦労が、その涙と嗚咽からありありと伝わってくる。

「総団長!何か言ってやって下さい!!」

ちょこまかと逃げるオーウェン。ゼエゼエと肩で息をし、リストは切実に訴えた。
が、当のキーツは全く相手にしていない様で、腕を組んだままずっとトウェインを見つめている。

「………ドンマイだリスト。………オーウェン、尋問を再開しろ」

……何処となく声に動揺が見られるものの、ようやく落ち着いてきたらしいキーツ。
ただ、やはりまだ目は離せない様だ。


「はいはい…っと。……………あんたの事については後ほどゆっくり聞かせてもらう。今は、今の問題からだ…」

なんだか落ち込んでいるリストを傍目に、オーウェンは椅子に座り直した。


「…………次の襲撃のことだ。……何を企んでやがる?……………何か知らないかね、お嬢さん…」


……トウェインは薄ら笑みを浮かべた。




「…………すぐだ。もう、間近だ」
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