亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………間近。

トウェイン以外全員が、顔を険しくさせた。

「………具体的な日にちは?」

「………既に一ヶ月を切っている。………次の朔の日…その日の…日の入り………あのクーデターからちょうど六年になる。…………………………第3王女の生まれた日だ」



―――パキッ…。





…小さな音。静寂漂う室内に響き渡るのには充分な音量だった。

………恐る恐る、オーウェンとリストは後ろを振り向く。


………そこには、無表情でトウェインを凝視したまま頬杖を突くキーツ。握られた手の平には、中央から折れた羽根ペンが覗いていた。


………オーウェンは前に向き直った。

「………次の朔の日…ね。………一ヶ月どころか三週間切っている。………なんでまたその日なんだ…?」

「………総隊長の御意思だ。………各隊の隊長と全兵は勿論のこと………その総隊長も戦場に出られる」


……背後のアレクセイは息を呑んだ。

「…………奴が出て来るのか……?」


ぞくっと身震いする様な、キーツの低い声音が聞こえてきた。

あのクーデター以来、総隊長は一度も表に出て来たことは無かった。

闇に居座る、不動の男。




その男がようやく…。

「…………白黒つけるってことか?」
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