亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
キーツもかなり背は高い方だが、それ以上にオーウェンはでかい。自然、キーツは彼を見上げて会話しなければならなかった。

「……オーウェン、そろそろ軍議を始めるぞ。リストが苛々しながらお前を待ってる」

「ほー……ご苦労さんなこった。待たせるだけ待たせてやるよ。あいつには忍耐ってものが皆無だからな」

けらけらと笑いながら、剣を鞘に収める。
下の方にいる兵士達は総団長であるキーツの存在に気付くや否や、さっきよりも激しく剣を振るった。

「………奴等……急に張りきりやがって…俺しかいねぇ時はかなり怠けてるぜ?」

「……指揮をとるお前自身がさぼっているからな…」

「……心外だな―。俺はこの一度きりの人生を楽しくうはうはで過ごしてもらいたいと思って、貴重な恋愛講座を…」

「…全員強制参加させているじゃないか」

キーツは呆れ顔で言った。


オーウェンは自称、〈ラブカウンセラー〉と名乗り(もう誰も何も突っ込まない)、時々訓練を放棄して恋愛講座を開いている。

……その度にリストが講演を中止させている始末。
キーツはもう諦めていて、終いには兵士達と共にぼーっと講座に参加していたりする。







これで良いのか、総団長。
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