亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――遅い!遅いぞてめえ!20分45秒の遅刻だ!総団長に迎えに行ってもらったのは一体何度目だ!!」

びしぃっ!と指を差す。オーウェンは実に楽しそうに、その場で背伸びをする。

「……手荒い歓迎…有り難う。……御免ね―リスト君。いい大人がこんなんで。……オーウェン反省―」

「開き直るな!茶化すな!」

ふざけた大人と子供扱いされるのが大嫌いなリストは、再度二、三本ナイフを投げる。

その全てが軽やかにかわされ、全てがキーツに降り懸かる。

丁寧にナイフを受け止めながら、オーウェンを押し退けて室内に入った。

「……総団長!?いらっしゃったんですか!?」

オーウェンの後にいたため見えなかったとはいえ、なかなか酷い事を言う正直な部下だ。
無言で計10本のナイフをリストに返し、一際目立つ総団長専用の椅子に腰を下ろした。

………気品もあり、堂々たるその様は確かに国家騎士団の長に相応しい。

先程までの、お人好しな雰囲気や憂鬱な表情は何処へやら。
………今その座についているのは、静かな闘志を燃やす戦士だ。


リストは過大な尊敬のまなざしを向けながらきびきびと敬礼をし、着席した。

オーウェンもここは真面目に敬礼をする。
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