亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
腰の剣を鞘ごと外し、正面に垂直に立てて、両手を添える。

……そのまま数十秒、キーツは俯いていた。

………ふ――…と深く息を吐くのが、ぴりぴりした空気の室内に響いた。







「………では…」





キーツは顔を上げた。





アレスの使者にとって最も厄介で、最も恐れられている男の、ギラギラとした二色の両眼が現れた。




「………始めようか、二人共」








こういう時のキーツの覇気は凄まじい。
並の人間はこの場に一秒といられない。


燃える様な赤。
黄金の輝きを放つ琥珀。



―――…気心の知れたオーウェンでさえ、身の毛がよだつ。
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