亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
不気味な、低い小さな笑い声が、静かな室内に孤立して響いていた。
ここは………寒い。
「……………………良いところで………邪魔が入ったか…………フフッ……あの老いぼれどもめ…………まだ生きていたいのか……………」
俯いたまま、クライブは肩を震わせて笑い続ける。
……策が失敗したにも関わらず、彼はこの状況をむしろ楽しんでいる様だった。
そんな彼を、ベルトークとジスカは扉の前で黙って見詰めていた。
「………老いぼれどもが間違って殺されれば……多少は楽になる筈だったが………………まぁ良い………………………存分に楽しもうではないか………」
「……………守人を操るのは、ジスカに任せておりました。…………その際……総隊長のおっしゃった通り…………国家騎士団の元でトウェインを目撃したそうです。………守人の消去を制したのも奴です」
ベルトークは淡々と述べる。当のジスカは、無言だ。
「…………分かっていた事だ。………………奴のいる場所は…………本来はあちらだからな。………………二人共下がれ。また後から指示を出す」
言われるまま、二人は揃って敬礼し、退室した。
「………どういう風の吹き回しだ?」
退室した直後、暗い廊下でベルトークがジスカに話しかけてきた。
「………最近はえらく真面目だな。………お前らしくもない」
口元には意地の悪い笑みが浮かんでいる。
ジスカはポリポリと頭を掻き、やはり無表情で……歩いて行った。振り返ることなく、ボソリと言った。
「…………別に。………………ふざけても…仕方無いじゃないですか……」