亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
数多くの視線が、意識が………全て、トウェインに集中していた。
荒野の真ん中で、トウェインは朝日が照らす大地を踏み締めた。
消えた守人の気配は丘の上…貴族の塔の方へ移って行った。
…彼らに聞きたいことは山ほどある。
………王族である自分の素姓を明かしてしまった今………酷く居心地が悪かった。
………トウェインは黙って塔へと歩み出した。
「………アレクセイ、早く怪我人の手当てに移れ」
アレクセイが目につくや否や、トウェインは言い放った。
「…………はっ」
アレクセイを追い越した途端………………こちらを真直ぐ見詰める、赤と琥珀色のオッドアイと、視線が重なった。
その男の目は、困惑していた。
……トウェインは黙って、足早に追い越そうとした。
「………」
擦れ違い様、キーツは何か言いたげに、口を開いた。
………何を言えば…何と話しかければいいのか……分からない。
………しかし……。
呼び止めようと手を伸ばした途端、彼女は、小さく呟いた。
「…………すまない……」
華奢なシルエットが、すぐ隣りを過ぎ去って行く。
「…………………………………………覚えて、いないんだ……」
………その背中は小さくなる。
遠くなる。
途中まで伸ばされた手は、ゆっくりと、下がっていった。
心は何処か虚ろで……………………………………。
………そこには何も、無かった。