亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
17.敵と、敵と
―――……人が狂い出すのって…どういう時かしら?
夜の訪れを報せる、赤い夕日と熱を捨て始めた風。
―――……私はね………狂気は………元からあるものだと思うの。生まれた時から……誰もが抱えているもの。…………父上もそう……どんなに優しくほほ笑んでいる時も、欠かさず抱いていたのよ。
―――………元から……か。…………ならば君もか…?
―――ええ。勿論。…………有り得ない様な狂気を、ね。……………ある時をきっかけに………持っていることに気付くの。……………そして………使ってしまうのよ。………温和な貴方もよ。………皆同じ様に、同じ位の狂気を持っている。……………出来れば使いたくないわ…………父上の様に……。
―――………狂気は…犠牲しか生まない。良い事など一つも無い。他人にとっても、自分にとっても……。
―――………そう言う貴方が狂気染みてしまったら……どうなるのかしらね?………想像も出来ないけれど……。
―――………私がか?……それは………私にも分からないよ。…………自分でも……何をするか………分からない。
―――………人間っていうのはややこしくて………何だか…面倒ね。…………心は複雑過ぎて………たまに要らないって思うの。………ねぇ、クロウ………………そう思わない?