亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
日が高いというのに、そこは夜の様に暗く、冷たかった。
広大な“沈黙の谷”の奥に埋もれている黒い塔。
その塔の最上階には、位の高い人間しか上れない。
………そこへ、まだ若い一人の少女が足早に向かっていた。その細い背中を追いかける様に、後から背の高い青年が続く。
「―――ちょっと…ちょっと待てよトウェイン!そんな急がなくったって軍議はちゃんと始まるって!」
「始める側の我々が遅れては元も子も無いだろうが!急げ!この遅刻魔が!」
速度を緩める気配の無い少女は、まだどこか幼さが残る整った顔立ちだが、ブルーの瞳の鋭い眼光は年相応のものではない。