亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「……まず…あちらからの、今回の宣戦布告だが………」

重苦しい空気の中、リストは口を開いた。

「………宣戦布告が本当なら、襲撃は二日後です」

「……本当だろ」

へっ、と薄い笑みを浮かべ、オーウェンは頬杖をついた。

「……あちらさんは冷酷で、残忍で、裏切り者だが………戦争で嘘はつかねぇよ」

この戦争は、両者とも平和を願っている。志あっての戦いなのだ。
……卑怯な真似などする筈が無い。
それはあちらも心得ている。



「……『時は夜の始まりから』………日が沈むのと同時に、という訳だな…」

「………夜だなんて……奴等にとって最も有利な時です……あの厄介な“闇溶け”が問題です……」

「……昼だろうと夜だろうと、構わん。……“闇溶け”に関してはそれ相応の対策を立てている。………暗殺部隊を前に、無駄に六年も時を過ごした訳ではない…」

“闇溶け”は忌々しい能力だ。
光を避け、闇に逃れ、獲物の後を取ろうとする……。

………裏切り者にはお似合いだ。

ふっ、とキーツは笑みを浮かべた。
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