亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ゲイン家とヴァンニ家の長い長い家系図も克明に書かれていた。


「……名高い貴族も、今や途絶えてしまわれて………歴史は、常に一瞬ですな…。……………………ん…………?」

アレクセイの目が、とある一点で止まった。









細かい五つの貴族の樹系図。

………しかしもう一つ、薄汚れて見えない樹系図がそれらと共に並んでいた。

樹系図の上から下まで、真っ黒なインクで汚している。

……中央部分が焼けて穴が空いているが……これは故意に燃やした跡だ。

一体誰がこんなことを……。


(………しかし………もう一つ、大貴族があったのか………?)

アレクセイの知る範囲では、大貴族は五つ。それ以外は聞いたこともない。


………焼かれた樹系図の一番下の辺りは、うっすらとまだ文字が生きていた。

ランプを近寄せ、弱った老眼で覗き込んだ。






………?












………………。






















―――……“ユリアジェイラ”






















「……………“ユリア”?」









< 833 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop