亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
人間として…扱ってくれない。………認めてくれない。
この迫害だらけの廃れた社会に、異質な自分の居場所など、無い。
「………好きで………こんな風に…生まれて来たわけじゃない!!………僕の母親は…………僕を身籠もっていた時……フェーラに噛まれたのさ…………………何の因果だ?…………生まれてきた子供は……人間でもフェーラでもない。………居場所の無い混血さ…………!」
それからの日々は、冷たくて、残酷で………孤独だけが、側にいた。
出産の際、母親は亡くなった。
………唯一の肉親である父は…我が子を見た後……村の外れで首を括り、自殺した。
異質な赤子は、そのまま売られた。
見せ物にされ、化け物と呼ばれ………。
「………嫌いだね……………あんな獰猛な化け物なんか………!…………あいつらさえいなければ……僕は…………………人間だった……」
物心ついた時から、自分の存在理由が分からなかった。
何故人は、何か違うと差別したがるのだろうか。
己が優れている様な振る舞いをするのか。
こんなに似ているのに。
………たった一つだけ、違うだけなのに。
何故人は…………迫害を好むのか。
希望も何も無い。
そもそも希望とは何だ。
僕にとっての希望とは、何なのだ。
檻の格子の外から差し込む陽光は、眩し過ぎる。
風は何も言わずに立ち去って行く。
雨は僕の嘆きをかき消してしまう。
何処にも、味方はいない。
そんなもの、知らない。