亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
いつもの眩しい陽光。照り付ける日差しに瞼を閉じる。
………ある時、その光は遮られた。
檻の前には、いつもの鞭や鉈を持った人間ではない、別の人間が立っていた。
―――…フェーラか?
―――……の、様ですな……………ハーフらしいですよ。
―――………人間にしか見えないが…。
―――……ここは兵士達に任せて、我々はそろそろ戻りましょう。密輸の取締は他にもまだ御座います。オーウェン様が一足先に向かうそうです。
―――なあアレクセイ……………連れ帰っては駄目か?
―――…はい?
―――………連れて帰る。良いだろう?
―――……キーツ様………それは…。
―――…なら、総団長命令だ。そう言えば良いのか?
―――………しかし…。……………そう言われると反対の余地が無いでしょう……。………畏まりました、初々しい総団長様のご命令とあらばこのアレクセイ………何も……………言い………ますまい。
―――………………………何か言いたげな顔だな……。………檻の鍵は?
―――…この場で開けるのですか?……それは危険……。
―――よく見ろアレクセイ。………この子は、噛み付く様な子供ではないよ。………大丈夫だ。
鍵が開いた。
開かれた道を前に、ぼんやりと目の前の少年を見詰めた。
―――……連れて帰るとは言ったが………お前の自由だよ。………一緒に来たければ………頑張って追いかけて来い。アレクセイ、僕は歩いて帰る。
溜め息を吐く老人の横を、少年は歩いて行く。
だんだんと小さくなっていく背中。
気がつけば自分は……………………泣きながら、追いかけていた。