亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………僕は……………一生フェーラを憎む。…………あいつらがいる限り、僕は………!」
「…………被害妄想も甚だしい」
ローアンは冷たく言い放った。怒りを露わにするリストの両目が、微かに赤色を帯びた。
「…………何だと…!!」
「呆れた奴だと言っているのだ、小僧」
ブンッ、と剣を振り、切っ先をリストに向けた。リストを見詰めるその目は、鋭い。
「………哀れな。哀れな。哀れな。…………そう思われたいか?不幸だ、惨めだ……思われたいのか?………本に馬鹿な小僧よ。………………お前のその負に塗れた世間への憎悪で、他を巻き込むな。……………迫害など、私はお前程重くは受けていない。だがな……………」
キッ、とローアンは睨んだ。
「……………自分だけと思うな。貴様と違って…口にはせず、耐えている者もいるのだ。………分かるか小僧?…………………吐き出そうともせず、むしろそれを胸に刻み………前に行こうとしている者の信念が……。…………自分だけが傷付き、犠牲を増やすまいとしている心が。………それに比べて貴様はどうだ………………………八つ当たりをしている……ただのガキだ!」
…………熱い何かが、ふつふつと身体中を駆け巡る。しかしそれ以上は何も起こらない。
………言葉が、見つからないのだ。
…………完全に見透かされていて…………………何も、言えないのだ。
………………自分でも気付いていなかった小さな所まで、彼女はその瞳で捉えた。
……………急に自分が、無力に思えてきた。
無力。
………憎悪の矛先は…………………己の心……………か……。