亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――……“ユリア”?」
「……はい。この聞き覚えの無い消された貴族の樹系図……家を受け継いだ方々の名に必ずこの“ユリア”が付いているのです」
アレクセイが見つけてきた古い歴史書。それを囲むように幹部の面々は覗き込んでいた。
少し離れた部屋の隅で、ローアンはじゃれてくるルアの相手をしていた。
「……つーことは……ユリアクロウ…っていう名前のあのおっさんは…………この消された貴族の家系の、長男か何かって事か?」
「……その可能性は御座います。………あの男は、素姓が一切知られておりませんからな………。しかし………大貴族が何故………この様に消されて……」
考えを巡らせていると、頭上でグラリと空気が揺らいだ。
何?と見上げた四人の視界に飛び込んで来たのは………。
………揺らめく真っ白な三つの亡霊…!……………いや、紛らわしいが守人だった。
「「「―――おおおっ!?」」」
アレクセイ以外は思わずのけ反った。
「……びっくりさせんなよ爺さん達!!神出鬼没は良いが出て来る所を考えな!!頭上は結構怖い!!」
心臓に悪いなぁとオーウェンは悪態を吐く。
『…………ユリア………ユリア………』
『………その名は禁断の名………………遠い昔の名……』
『………忘れられた者達………………虐げられた者達の名……』
………四人は無言で守人を見上げたまま、数秒固まっていた。
「………それ、なぞなぞ?………おい、誰か解けよ。俺は昔からこの手のなぞなぞは苦手なんだ……」
「………共通点とか見つければ、案外解けるかもしれないぞ」
「総団長、キーワードが殆どありませんよ……」
ヒソヒソと話し合う三人を尻目に、アレクセイは守人に視線を移した。