亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「貴方方にお尋ねした方が…確実でしょうな。伊達に古文書以上の歳はとっていないでしょう………知っている筈です………クライブ=フロイアという男を」



三人の守人は互いに目配せし、ゆっくりと部屋の隅へ移動した。

『……………ならぬ…………ならぬ……』

『……禁断の名は…………知られてはならぬ……』

『……………その名が記憶に止まる事を禁忌としたのは…………他ならぬ王………………フェンネル王…52世……』


…………52世。………かの悪名高き、狂王だ。禁断とは……また何故……。

「……その命令を出した王は、もういないではないか」

始終黙って聞いていたローアン。ルアにお手、をさせながらポツリと呟いた。


「張本人がいないのならば、禁忌を解く事も出来るだろう?……その血を受け継ぐ私が言う命令の方が、今は力があるという事だな。………禁忌を解け。必要なのだ」



………職権濫用、という言葉がオーウェンの脳裏を掠めたが、口にはしなかった。


『…………ホッホッホッホッ………』

『………………誠に……手の掛かる…姫様じゃ………』

『………勇ましいこと…………………50世にもこれ程の威厳を持ち合わせておいでだったら…………』


「………過去の王の愚痴はいい。どうなんだ?………解くのか解かないのか?」

はっきりしない守人に顔をしかめる。笑うな。



『…………宜しいでしょう………』

『…………逆らえますまい……』

『………御命令は……絶対』




………言い負かしちゃったよ………、と囁き合う三人。
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