亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『―――……“ユリア”とは……………今は無き古代の言語であります………』
『―――………意味は(誘う者)。……………………魔の者を示す言葉で御座います…』
「………魔の者を意味する?」
首を傾げるローアンに、守人はゆっくりと頷いた。
『…………52世によってその存在を消された大貴族は、第6貴族…カリオン侯爵家……………』
『――………この大貴族の家系は………魔の者の血が通っておりました』
―――全員が、息をのんだ。
今……何て………。
「…………魔の者の血が…って…………混血ってことか…!?………人間と魔の者……?」
「…………子を生せるのか?」
『………左様………………カリオン家は何十代も昔………魔の者と交わり、それからずっと混血が続いております。……………その血は一向に、薄まることなく…………』
謎めいた魔の者達。
男女とも、緑の髪に不思議な模様が刻まれた、芸術とも言える美しい瞳。……姿は人間と変わらないという。
…しかし……寡黙で、仕えた王族以外の人間とは一切言葉を交わさないらしい。
絶対忠誠を貫く彼らは、王のためならば死ぬことも厭わない。
存在からして謎だらけな種族だ。
………そんな者達と……一体どんな物好きが……。
『…………名高きカリオン家……………しかし………魔の者の虐殺を命じた52世は………この大貴族にも……………刃を向けたので御座います………』
「…………混血だから……」
リストの表情に、暗い影が差した。