亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『………女子供構わず……カリオン家は…主である王の手先によって……皆殺しにされました………』

『………屋敷には火が放たれ……カリオンの土地は全て焼け野原となりました。………血を抜かれた死骸は粉々にされ、どこぞの谷に撒かれました。………何もかも……跡形も無く…………』

『………カリオンに関する書物は焼かれ………親交の深かった人間は……次々と囚人にされ……その殆どが獄中で死んでしまわれました』





「……酷い………」

………血の繋がった親族が、祖父にあたる偉大な王が…………ここまで残酷であったとは………。

………………狂っている。

『…………しかし………滅したカリオン家の長男であった若者は…………難を逃れた………』

『…………若者は…………その後、憎悪の矛先である王の元に………国家騎士団の兵士として………』




「………カリオン家の人間は全員……名前の前に“ユリア”が付くのか………。…………………ユリアクロウ………………………生き残ってしまった……哀れな男だな……」



………呪われた名。忘れ去られた名。

キーツは深い溜め息を吐いた。

「…………しかし……その生き残りが国家騎士団に入った時点で、誰も分からなかったのか?……守人のあんたらは気付いていたんじゃないか?」

分かっていれば、あの悲惨なクーデターを未然に防ぐことが出来たかもしれない。

『………奴は生まれながらに……強力な魔力を秘めた人間でありました………』

『…………黒の魔力で我らの目をたぶらかせていたのでしょう……………』

『…………誰も……奴の真の顔に気付く者はおりませんでした………』
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