亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~












―――闇の中は、ぼんやりとしている様に見えて、その空気は、実は常に張り詰めている。

獲物を狙う者、天敵に狙われていると気付いた者。

両者が睨み合うその『間』に、よく似ている。




…………この、息も詰まる様な空気が……………………酷く愛しかった。


………生死の境目に佇むこの不安と、焦りと、恐怖と………快感。







ふつふつと浮かんで来る小さな気泡に似た感情。

もどかしい。

この感覚が……。





















「―――……………………何処だ………?」

















………ユリアクロウ………………しかし今は………クライブ。クライブ=フロイア。





彼は独り。………独りを生み出す孤独を前に、不気味な微笑を浮かべていた。


















背もたれに寄り掛かり、見上げた虚ろな視線の先には………………………何も語らぬ、女の肖像画。
















…………目を開ければ、お前がいる。何も見ていない作られた目で、私を………見ている。


やあ、女王。

久しいな、女王陛下。


















………玉座からの眺めはどうだ?………カルレット。




























「………………………………………私は……………………………………何処に行くと思うか………?」























低い、淡泊な笑い声が、続く。










―――死んでしまった、笑い声だ。

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