亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「――…そうだ。突きで避けられた後、相手の攻撃をもう一方の剣で防ぐ。もしくはそれ以上に素早く切り付けて二段攻撃にするのも良い。………今のは良かった」

片手で剣をクルクルと回し、前髪を払いながらローアンは言った。
その向かいには、息を切らして再度短剣を構えるリストがいた。
浮かべる表情は真剣そのものだ。

「……短剣は軽く、最小限の動きで間合いを詰めることが出来る。一撃一撃は弱いが、速さでカバー出来るな。………しかし、リスト。お前の場合は両剣だ。左右の腕でそれぞれ異なる動作をするのは、頭の方が混乱して身体がついてこない。……そこが難しいところだ。分かるな?」

「……はい!」

「ならいい。この難点を克服するのは、至って簡単だ。要は、身体で覚えれば良い。………よし、次の動作に移る。今度は体術を混ぜるからな。避けるなり防ぐなり、とにかく迅速な判断を求めるからな」

「はい!」






リストはここ数日で、グングンと力を高めている。
これも全て、ほぼ毎日付きっきりで訓練相手をしているローアンのおかげだった。

当初、あれ程反抗してきていたリストだったが、一体どうしたのか。積極的に訓練を申し出て来る。
他人に剣術を教える事に慣れているローアンは快く引き受けた。




(…………イブと同じ……いや………上か……これは…ダリルも勝てるか分からないな)


そんなことを考えながら、ローアンはリストの剣を弾き返し、足払いを掛けて一瞬浮いた身体に、右ストレートを打ち込んだ。


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