亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………オーウェン様、真面目に探してくれないのでしたら出て行って下さい。邪魔です」
「………………邪魔…?…………ああ…………邪魔ねぇ………ふーん………」
アレクセイのやや鋭い注意も、完全に馬耳東風状態。
資料探しに専念しているアレクセイの隣りで、『憂鬱日記その2』と書かれた誰かの日記をぼんやりと読んでいる。
「………………1ページ読むごとに、どんどん内容が暗くなっていくな…………面白い………爺さん、この日記の前のは無いのか?これ、その2って書いてあるぜ?」
「知りませんよ………戦火で燃えたか、ごっそりと持って行かれた書物の中に混じっていたかもしれませんね。………退いて下さい。…………黒の魔術に関する書物があれば教えて下さい」
オーウェンを強引に退し、無造作に積まれた本の山を掘っていく。
「…………黒の魔術……………………あのおっさんに弱点なんかあるのかねぇ……」
「………分からないからこうやって探しているのです」
ムッとするアレクセイに、オーウェンは笑みを浮かべた。
「…………無いと思うぜ―?…………………好きだった女を殺す様な…狂った野郎にはな……」
………狂王によって強引に婚約破棄をされ……………家を焼かれ、家族を串刺しにされ…………何もかも無くした後………激しい憎悪が生まれた。
それから別人に成り済まし、国家騎士団に入り、敢えて目立たない行動を十数年も取り続けた。
そして彼は、長年秘めていた憎悪を表に出し………王族抹殺の計画を、実行した。
皆殺した。
狂王の悪政に異議も何もしなかった大臣達や、貴族達を。
狂王の血を引く姫君を。