亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
――慕ってくれていた、小さな弟子までも、殺そうとした。
そして…………かつて愛していた、最愛の人を、追い詰め、消した。
「…………その娘を騙したまま糞強い兵士に育てて………使い捨ての駒の様に扱って………どこまですれば、終わるんだ?…あのおっさんの復讐劇は……」
「……………全て無くなるまで、でしょうな………特に、あの52世の真っ赤な碑石…………城諸共、消し去るつもりでしょう」
関係の無い書物を放り投げ、新たな山に取り掛かった。
「………裏切り、裏切り……………汚い事ばかりだな…………戦争は…」
………高価な生地に、きめ細かいレース、金や銀のボタンに、花を描いた刺繍。
綺麗な綺麗なドレスに身を包み、ほほ笑む………昔の、小さな頃の私。
螺旋階段を上がっていくと目にする、壁に立て掛けられた肖像画。埃を被った額縁に収まる、10歳の私は、なんだか実物より愛らしい表情を浮かべていた。
………そういえば、こんな絵を描くためにリネットから「1ミリも動いてはなりませんわよ!!」と怒鳴られながらモデルをした覚えがある。
………あの時はきつかった。
ドレスもいつもより動き辛い、無駄に装飾されたものだったから……きつかった。
「………絵の方が、女の子らしいな………」
苦笑しながら、隣りの絵に視線を移した。
…………家族全員が集まった肖像画だ。
母に、二人の姉。
父は亡くなられていたから、描かれていない。
………私達三人姉妹は、母によく似ている。
………………今は……………自分独り。