亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………王族なんて………要らない。…………………偉大なる王の血を引いて生まれてきても……何一つ良い事なんか無い……」
ローアンは目を瞑り、ゆっくりと俯いた。
僅かに開いた口から、小さな溜め息が漏れる。
「………記憶を無くして、トウェインとなって……城の外で生きてきて…………その考えはより一層膨らんだ。………裏を覗けば埃と錆だらけの都市、貧困に苦しむ村、戦火で消えた街、売られていく民…………色々、知った。この目で………見た」
それらの過酷な世界に比べて、自分はどうだ。
………苦労など何一つ知らず、悠々とぬるま湯に浸かる様な日常。
この差は何だ?
この深い溝は、何だ?
「………恨まれる筈だ。……………上に立つ者は………全てを抱えなければならない。………不幸な事だ。………民は皆………王など必要としていない。………だから………私は王族という存在が、嫌いだ。………私自身も、嫌いだ」
出来るなら、幼い自分の肖像画を今すぐにでも引き裂きたい。
こんな私は要らない。
こんな………。
「………俺も………貴族という無駄に威張った存在が嫌いだった」
ふと、キーツが口を開き、ローアンの方に視線を送った。
「……要らないだなんて…………言わないでくれ。………………………君が王族でなければ………俺は………………………君とは会わなかっただろう…」
「………」
ローアンは目を瞑り、ゆっくりと俯いた。
僅かに開いた口から、小さな溜め息が漏れる。
「………記憶を無くして、トウェインとなって……城の外で生きてきて…………その考えはより一層膨らんだ。………裏を覗けば埃と錆だらけの都市、貧困に苦しむ村、戦火で消えた街、売られていく民…………色々、知った。この目で………見た」
それらの過酷な世界に比べて、自分はどうだ。
………苦労など何一つ知らず、悠々とぬるま湯に浸かる様な日常。
この差は何だ?
この深い溝は、何だ?
「………恨まれる筈だ。……………上に立つ者は………全てを抱えなければならない。………不幸な事だ。………民は皆………王など必要としていない。………だから………私は王族という存在が、嫌いだ。………私自身も、嫌いだ」
出来るなら、幼い自分の肖像画を今すぐにでも引き裂きたい。
こんな私は要らない。
こんな………。
「………俺も………貴族という無駄に威張った存在が嫌いだった」
ふと、キーツが口を開き、ローアンの方に視線を送った。
「……要らないだなんて…………言わないでくれ。………………………君が王族でなければ………俺は………………………君とは会わなかっただろう…」
「………」