亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………俺にとって………君が王族であろうが、敵であろうが………関係無いんだ。……………ローアン、君は……君一人だ。俺の中では、君だけだ……」







……真剣なまなざしが、本の少しだけ揺らぎ、戸惑うローアンの瞳を射抜く。


数段上に立つローアンは彼を見下ろし、キーツはそんな彼女を見上げる。


手を伸ばしても届かないが、互いに伸ばせば手の平を合わせる事も出来るだろう、近くも遠くも無い、奇妙な距離感。

この距離は、何を意味するのだろう。





………何と答えて良いのか分からず口を閉ざしていると、キーツは微笑を浮かべ、何事も無かったかの様に階段を上がり始めた。

「……さて、軍議を始めないとな……ルアはローアンと一緒にいろ。難しい話より菓子の方が好きだろ?」

ルアの額を軽く小突き、キーツはローアンを追い越した。







書庫のある階にまで昇り着くと、調べ物が終わったのか、それとも自分を待っていたのか、壁に寄り掛かって何やらニヤニヤしているオーウェンが視界に入った。

「なんだ……終わったのか?そんな所で何をしているんだ」

「………お前、自覚無えだろ?……その方が素直だな~?」

「………………は?」




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