亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
なんだか身体が暖いなと思いきや、ルアがすぐ隣りで身体を丸めて寝ていた。
そっと撫でると、丸い目がパチッと開いた。

「……………だんだんと……思い出してきたよ………………やっと」



……よく分かっていないらしい。首を傾げながらも、甘えた声を出して太股の上に頭を置いてきた。

苦笑しながらルアを撫でていると、乾いたノック音が部屋に響いた。

「ローアン様、アレクセイに御座います」

「入れ」


ガチャン、と扉が開き、笑顔のアレクセイが姿を現した。


「………もう軍議が終わったのか?随分早いな…」

「いいえ。まだ続いております。だいぶ掛かるでしょうな……。内容が軍備強化と、私の専門外となりましたので、取り敢えず、私だけ抜けてきました。老いぼれにあの長時間の会議は、ちと辛いですからな」

ちょっとした休憩か。アレクセイは笑顔のままローアンの向かいに立った。


………ローアンとルアは怪訝な表情で、何故か前で佇む老紳士を見詰めた。


………このパターンは…。





「…………まあお時間もありますし………ローアン様もさぞや退屈の様ですからな?…………ということで…」

後ろで組んでいた手が表に出される。
…と、その両手にはやはり、色鮮やかな質の良いドレスが掴まれていた。


………アレクセイ、毎度思うのだが………何処から出した?



「……こちらはシックな色合いを基調としておりまして、この季節には最適な防寒に優れたドレスです。もう片方はご覧の通り、全体に濃い青を、白の刺繍をあしらったものでして、可愛らしさと上品さを兼ね備えて…」


………そんなに着せたいのかアレクセイ。めげないなアレクセイ。
永遠と続きそうなドレスアピール。
< 856 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop