亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………アレクセイ」

溜め息混じりに呼ぶと、アレクセイのドレスアピールはピタリと止んだ。


「………はい」

………また話題を変えられて流されるか、このまま逃げられるか。今日も諦めようとドレスを引っ込めようとした時だった。




「………青い方で良い」

「そうですか………青い方で宜しいので……………………………………………はい?」


惚けた顔で固まるアレクセイ。…………今………今何と?


「……青い方で良いと言ったんだ。…………何だその顔は?……聞こえないのか?」

苦笑混じりにもう一度言った途端、アレクセイはわっと両手で顔を覆い、号泣し始めた。

………そして何事も無かったかの様に爽やかな表情が上げられた。

「こちらで御座いますか。こちらで御座いますか!では早速!着方は分かりますかな?」

「まあ…朧気に…」

「そうですか!ではお召し物は一式こちらに置いておきますので、大体着替え終えましたら呼んで下さいませ!このアレクセイ!部屋の外にお呼びが掛かるまで辛抱強くお待ち申し上げております!」

何だろうこのやけにテンションの高いアレクセイ。
調子狂うな。

「…………うん」

「それでは!下がらせて頂きます!!」


ビシッと最高の敬意を込めて敬礼し、そよ風の様に部屋から出て行った。



…………。









………着替えよう。







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