亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
暗い中でも映える様な色白の肌に、艶のあるブロンドの髪。背は低く、華奢な体付きだ。………きっと笑みを浮かべればそれはそれは可愛らしいこと間違いないのだが……今の彼女は睨み一つで人一人殺せそうなほど苛立っていた。

「………呼んでも呼んでも呼んでも呼んでも出てきやしない…起こしに行く私の身にもなれ!次は行かん!」

「………だから、すまないって言ってるだろ―…まあ、そう言いながら起こしに来てくれるんだもんな―、トウェインは。ジスカ感激―ってな」

不機嫌なトウェインを前にしても楽観的な好青年。
背はトウェインよりも頭一つ分高く、細身だ。長く明るいブロンドの髪は後で一つに結っている。透き通った明るい朱色の瞳は鋭さを兼ね備えているが、あからさまに表に出していない。

「………ジスカよ…反省の色が無いようだな………ああ良いだろう!次に起こしに行く時は貴様の部屋に相棒のトゥラを放ってやる!存分にそのアホ面を噛ませてやれ!そして二度と目覚めるな!」

容姿端麗な少女の口から出るとは思えない様な、悍ましい言葉の数々。
………冗談と分かってはいるが、ジスカの額に冷や汗が浮かぶ。

「―――おっかねぇ―…」
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