亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
吹き荒れる砂埃を防ぐため、厚いマントの裾を引き寄せた。


………日は高い。





…………神声塔の上から、戦場は見えるだろうか。


ぼんやりと空を見詰め、フードを深く被り直し、ローアンは足を早めた。
















「各師団長の状況報告は済みましたな。…地下水の断水、兵糧は問題無し。………薪は足りているか?」

第一師団長は素早く敬礼をした。

「はっ。昨夜、調達しておきました故、問題ありません」

「宜しい。………ワイオーンは予定通り、今の内に配置させておけ。………慎重にお願いします」

「はっ!」

踵を返し、駆けて行く師団長の背中を見ながら、深い溜め息を吐くアレクセイ。


クシャクシャに皺が寄った羊皮紙を畳み直し、胸ポケットに突っ込んだ。






………。

















眉間に皺を寄せた顔のまま、明るい空を見上げた。


………眩しい太陽。

その陽光を一瞬、巨大な鳥が遮った。




甲高い鳴き声が荒野をグルグルと回り続ける。

………これは昨夜から続いていた。

………何とも目障りな鳥だ。

第3師団長は鳥とアレクセイを交互に見やり、怪訝な表情を浮かべる。

「…………………アレクセイ様……昨夜からいるあの鳥は……その………バリアンの……」

……よく見ると、鳥の羽根と背には、赤い模様。
………逆さに燃える炎。バリアンの紋章だ。あの鳥はバリアンが放った偵察か何かに違いないのだが…。

………総団長や幹部らは何も言わない。完全無視を決め込んでいる。


「………勝手に飛ばせておきなさい。……見た所、敵意は無い様ですからな。人間も乗っていないところからして……単なる偵察でしょう。…高見の見物というやつです」

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