亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
少女の視線が、こちらに注がれた。
思わず見とれてしまう彼女の目が、今は恐怖を滲ませていた。
―――キーツ。
彼女の震える唇はそう言っていた。
止めてくれ。
もう充分だろう。
もう良いだろう。
何もかも………消し尽くす気なのか。
後から、家来の一人が息も絶え絶えに自分を抱え、走った。
謁見の間が遠くなっていく。
彼女が見えなくなっていく。
放して。
僕も………。
僕も死ぬ。
あの子を………。
城のある丘からだいぶ離れた時、カッと丘全体が光った。
城を囲む様に、見えない壁が現れる。
巨大な城門が独りでに口を閉ざす。